千葉大学 先進科学プログラム

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千葉大学は高校二年生から入学生を受け入れるためのプログラム「先進科学プログラム」を提供している。17歳で大学に入学する「飛び入学」は,諸外国では学習進度の速い生徒を対象に広く普及しているのに対して,日本では受け入れ大学が非常に少なく珍しい。

本プログラムは慎重に制度設計が行われ,独自のセミナー科目の開講や専任の指導教員体制,専用の学生居室,海外語学研修の実施など,入学後の手厚い配慮がなされている。そのプログラムの持つ3つの特徴から、「飛び級の価値」を考察してゆく。

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飛び入学制度

日本の国立大学では現在東京芸術大学(音楽学部)と京都大学(医学部)が平成28年より飛び級制度を取り入れている。しかし、それよりはるか以前に「飛び級制度」を導入した国立大学がある。平成10年より制度を導入した千葉大学(文学部・理学部・工学部)だ。千葉大学を含めたこの3大学だけが現在飛び入学を受け入れている大学である。

千葉大学の飛び入学制度は「先進科学プログラム」と呼ばれ、このプログラム生専用のカリキュラムで少人数教育を実践している。生徒はマンツーマン指導に使い形で専門的な研究をできる。

入学制度もまた特殊だ。「課題論述試験と面接」「一般入試結果と面接」から入試方法を選択でき、入学時期は異なる方式I・II・Ⅲ(詳細)があり、物理・数学だけでの受験が可能だ。また、「国際物理オリンピック」や「全国物理コンテスト物理チャレンジ」など、大会成績によって課題論述試験を免除するコースもある。

留学制度

主に理系(物理・科学・数学)分野を専門に研究する方に向けた本プログラムではあるが、決して物理の勉強だけして優秀な博士になれるわけではない。優秀な研究者になるに不可欠なのが、英語力だ。

なぜなら、研究分野を探求していくにあたって英語で書かれた論文より情報を得ねばならないからである。大学生までの分野の基礎知識であれば、日本語で書かれた教材から知識を得ることができるが、より研究段階の深いものになっていけばいくほど、日本語で書かれた資料は限られ、アメリカやヨーロッパで書かれた最新の論文に目を通すことが当たり前となってくる。

1・2年次に1ヶ月ずつという非常に限られたものではあるが、同プログラムは無償の留学プログラムを提供している。留学先とされているのが、1年次にAlberta大学(カナダ・アルバータ)、2年次にWaterloo大学(カナダ・トロント)。どちらも語学研修を目的とされており、その渡航費用・授業料・宿泊費は大学負担である。

もちろん、これだけの海外経験では焼け石に水であるため、大学は「キャリアパスプログラム(研究目的の短期留学)」と称して、希望者の3年次以降の海外研修費用を特定のプログラムに限らず柔軟に援助している。過去には、フランスでの国際会議でポスター発表、オランダの大学に研究のため短期滞在、スイスに1年間留学があり、これらの取り組みは大学で単位として認定される。

卒業後の進路

これまでこの先進科学プログラムの卒業生は合計でわずか76名である。しかし、その卒業生はこのプログラムの理念とする道に進んでいるようである。

千葉大学卒業後、そのまま附属の千葉大学大学院に過去27名が進学し、その中には世界的な研究機関であるマサチューセッツ工科大学(MIT)に進んだ学生もいる。また、続いて進学先としてメジャーなのが東京大学大学院(17名)であり、ここからハワイ大学大学院へ進む学生は多い。(図1)

しかし、同プログラムを経て博士号を取得した全ての学生が研究者になるわけではなく、卒業生のうちの43名(57%)は大手企業への就職をしている。日本・海外の大学研究機関や民間研究機関に努め研究の道に進んだ学生は12名以上であるが、一般的に博士過程修了者の30%が研究者や大学教員になることから考えると、このプログラムの卒業者は非常に多くが卒業後も研究を続けていることが分かる。(図2)

終わりに

このプログラムへの参加は、理数系の研究者になることを検討する高校生にオススメしたい。小さい頃から宇宙のことだったり数式のことが好きで好きで「オタク」と言われるような方だ。

大学のその先にある学問の道を、不親切にも高校ではあまり教えてくれない。「研究者」と一口に言っても、ある1つの分野を研究し続けるには、大学で”学士”、大学院で”修士”、”博士”と3つのステップで学を修めなければならない。(詳しい説明はこちら) この長く険しい道のりを人よりも1年はやく走り始めることが出来るのは、どれほどのアドバンテージであるだろうか?

このプログラムでは、単位修得の状況によって、学部の早期卒業や大学院を飛び級する制度があり、学士課程を3年で卒業した後、修士課程1年、博士課程2年で進級すれば、最短23歳での博士号取得も可能だ。

本プログラムの何よりの問題点としては懸念されるのは、「高校中退」という経歴がつくところである。この中退という経歴がついてしまうことは、避けられないことであるが、研究者になってしまえば、それは「飛び級をした優秀者」としての箔となる。

たかが1年の差である、といえば確かにそうだ。しかし、関心のない受験問題に取り組む”高校最後の夏”は本当に必要だろうか?あなたの持つその時間と熱と頭脳を、前のめりに没頭できる疑問に向けられたならどれだけ素晴らしいだろうか。

日本にも多少なりともそんな人を救ってくれる場所は存在する。筆者はそういう場がさらに増えてくれることを願う。

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