実就職率3年連続No.1、金沢工業大学の人材教育

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入学の敷居が決して高くないにも関わらず、その洗練されたカリキュラム圧倒的な就職率で注目を集める大学がある。金沢工業大学(以下、KIT)だ。 

KITは教育業界が近年重要視し始めてきた問題解決型学習に1995年より挑戦し、その教育を受けた人材が今非常に高い評価を企業から受けている。KITの教育の根幹には授業と課外活動のつながり、そして学生を支える大学の手厚いサポートがあるのだ。 

そのKITの教育システムの秘密を同大学の持つ3つの突出した特徴から紹介する。 

実践的な技術力の習得

KITの看板に「夢考房」とよばれる工房がある。これは、授業後に学生が思い思いのアイデアを形にするための”作業場”にあたる場所だ。 

夢考房は、学生が自由にものづくり活動に取り組めるワークスペースです。正課教育(授業)で学んだ知識を正課外教育(課外活動)に持ち寄り、仲間たちとの議論・失敗・試行錯誤を繰り返し、目標を成し遂げた時に得られる達成感こそが、正課教育の更なる充実につながります。こうした相乗効果により、夢を広げ新しい感性を持った技術者が育っています。アイディアをカタチに―夢考房では今日も学生がものづくりに励んでいます。 

http://www.kanazawa-it.ac.jp/yumekobo/about/index.html

この夢考房、専門的な技能を持った8名の技師が所属(2020年1月現在)し、設備も圧倒的な充実ぶりである。 

施設の面でいえば、夢考房は数え切れない企業と連携し寄付を受け、 基本的な工具からソーラープロジェクト用のトラック(企業より寄付)まで、非常に豊富な工具・工作機械・装置 をそろえる。(連携企業:参照)
それに加え、「パーツショップ」というものが置かれ、ホームセンターさながらの約1600点ものづくりに必要な様々な材料や部品を手に入れることができる。

そして、出場する大会での実績も凄い。種目は、ソーラーカー、人力飛行機、ロボットなど、ものづくりに関するものであればなんでもといった印象だ。なかでも直近の実績で輝くのが、アジアの代表が集うロボットコンテスト、ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト」で、日本代表として出場し優勝したことだ。 

こういった素晴らしい実績を上げる人材が7割以上が普通高校出身だというから、この工房が学生の技術力の向上に助けになっていることは明白であろう。(なお、さらに詳しい夢考房による教育成果はこちらの論文から) 

授業の質 

課外での創作に加えてこの技術力の向上を支えるのが、KITの授業の質である。大学の授業で起こりがちだと言われるのが教員が生徒の理解度をチェックせず自分の説明をどんどん先走り、生徒はいつの間にか理解が追い付かなくなってしまっている、という現象だ。 

工業大学のような専門性の高い大学では、よりその現象が起こっているのではないかと普通高校からの入学者は想像してしまうだろうが、KITにとってそれはいらぬ心配のようだ。 

2019年の週刊朝日で発表された”面倒見のいい大学ランキング”では2位に2倍以上の差をつけて1位にランキングされている。(*高校の進路指導教諭のアンケートよりポイント化)
また、生徒の口コミによると、授業は高校の内容の復習から始まり、Student Assistant(授業や生徒の質問をサポートする上級生)や質問をするための部屋も用意されているため、質問の機会は非常に多く授業への評価は総じて高い。 

4年間のカリキュラムをざっと説明すると1年生では数学や英語などの基礎科目とプログラミングなどを少しおこない、2年では専門的な内容が増え、3年生では基礎科目は終わり専門科目のみとなり、4年生では基本的に卒業研究をするといった流れだ。生徒の実力に合わせたカリキュラムであるとは言えないが、7割以上が普通高校からの進学という点を考慮すると、学生へのサポートがありすぎて困ることはない。 

このKITのカリキュラムは非常に多くの組織に評価されており、代表的なもの以下にあげる。 

  1. 中教審の学士教育課程のモデル大学として国際基督教大学、国際教養大学、新潟大学、筑波大学とともに選出。
  2. 文科省が進める革新的イノベーション創出プログラムの中核拠点に私立大で唯一採択
  3. 研究力が高い大学(大学通信調査)として、慶應義塾大学、東京理科大学、早稲田大学、近畿大学に次いで私立で5位 
  4. 小規模だが評価できる大学4位(サンデー毎日2018) 

就職率

最後に、「金沢工業大学」で検索した時にまず目を引くのがその圧倒的な就職実績である。大学通信の行った「2019年度大学実就職率ランキング」では、KITは3年連続で1位と評価されている。なかでも2018年の実就職率は98.1%であった。 

ランキングを掲載した同紙はこの背景として、 

研究や論文執筆などを通して、「計画→実行→評価→改善」といった、いわゆる社会人に求められるPDCAサイクルを回す能力が身に付いている点も就職率が高くなる要因だ。

と分析している。 

具体的にKITでは、1995年より『問題発見・解決型教育』を実践している。このプログラムでは、社会的な研究課題を発見し、学生同士でチームを組み解決策を模索する。2019年のプロジェクトでいうと、あるチームは山間部に薬を運ぶための垂直離着陸機を実際に製作、テストフライトまで成功させてしまった。 

近年注目され始めた問題解決型学習(Project Based Learning)であるが、KITはものづくりを通した学習として長年教育を提供し、ついに近年その教育は多くの企業に認められてきたということだろう。 

終わりに

金沢工業大学は「実習職率」ばかりが注目されがちだが、その背景には以上のような大学の授業での手厚いサポート生徒の課外活動への手厚いサポートがある。

KITへの入学は、偏差値:40.0~47.5、倍率:2.1(参照元)であるが、率直な言い方をすると筆者としては同大学の入学難易度がこの程度であることが不思議である。

物作りに興味があっても、”工業大学”といういかにも専門性の高そうな名前が普通科の高校生から敬遠されているのではないか、と邪推するが、逆に物作りに興味のある高校生にとっては、この圧倒的に手厚いサポートをしてくれる大学はまさにねらい目だろう。

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